今回からは、シングルモルト・スコッチのオフィシャルボトルに描かれた鳥について語っていきたいと思います。
早速ですが、今回のボトルはオーバン14年。
言わずと知れた西ハイランドの雄。ディアジオ社のクラシックモルトシリーズにも選ばれています。オーバン湾の海面に非常に近い場所に所在。 海が近い港町ということで同地でよく見られるであろうカモメ類がラベルに採用されているのは非常にわかりやすい点です。
しかし、ここからがなかなか個人的に頭を悩ませたところ。このラベルに描かれたカモメの種類は何なんだって話。
そこで、スコットランドで一般的に観察できるカモメ類を調べてみたのが以下の通り。
・カモメ(Common Gull)Larus canus
・オオカモメ(Great black-backed Gull)L. marinus
・シロカモメ(Glaucous Gull)L. hyperboreus
・ヨーロッパセグロカモメ(European Herring Gull)L. argentatus
・ニシセグロカモメ(Lesser Black-backed Gull)L. fuscus
・ユリカモメ(Black-headed Gull)Chroicocephalus ridibundus
・ヒメカモメ(Little Gull)Hydrocoloeus minutus
・ミツユビカモメ(Black-legged Kittiwake)Rissa tridactyla
上記8種類がスコットランドで一般的なカモメ類ということなんですが、カモメ類の識別は非常に難しく、このラベルに描かれているカモメの種類を特定するのはなかなか困難。カモメ類は種類数が多いというだけでなく、識別ポイントが多岐に渡り、細かいところまでよく見ないと判別できないのです。かつ、成鳥の羽色になるまでに2~4年かかり、幼鳥→第1回冬羽→第1回夏羽→第2回冬羽→第2回夏羽→第3回冬羽→成鳥夏羽→成鳥冬羽(その後は成鳥夏羽と冬羽の繰り返し)といったように、羽色が都度変化していくため、多くの野鳥愛好家を悩ませるジャンルでもあります。
気を取り直して、このオーバン14年のラベルに描かれているカモメは、前方が成鳥で後方が若鳥もしくは幼鳥と思われます。また全体的な特徴からLarus(カモメ属)であると考えられ、成鳥の頭部が全体的に白いことから夏羽であるとも考えられます。ただし、他のカモメ類が冬羽で頭部に茶色い模様が入るのに対して、オオカモメは冬羽もほぼ真っ白。
こういった考察から、オーバン蒸留所周辺で、夏に見られるカモメ属(オオカモメの場合は通年)と特定すると、カモメ、オオカモメ、ヨーロッパセグロカモメ、ニシセグロカモメの4種類に絞られました。
次に、背中や肩羽、雨覆羽に対する風切羽(翼の先端部分にある羽)のコントラストを見ると、あまりコントラストがなく一様に黒に近い色で描かれていることがわかります。このことからオオカモメとニシセグロカモメの2種類に絞られました。
そして最後に脚の色を見てみると、モノトーンで分かりづらいですが、嘴とは全くことなった暗い色で描かれていることが見て取れました。オオカモメもニシセグロカモメも同様に嘴は黄色ですが、脚はオオカモメが肉色であるのに対してニシセグロカモメは嘴と同じ黄色。つまり、このボトルに描かれているカモメ類はオオカモメ、という結論に至った訳です。長くなってすいません笑
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| 写真はeBirdから |
オオカモメ(Great black-backed Gull)Larus marinus
チドリ目カモメ科カモメ属
全長65-79cmと非常に大型のカモメで、姿形は日本で見られるオオセグロカモメ(Slaty-backed Gull)L. schistisagusに似ていますが、全長は10cm以上大きく、さらに嘴が太い。背中から羽にかけての黒色も非常に濃く、風切羽の黒色と大差ないほど。
スコットランドで同じように一般的に観察されるニシセグロカモメ(Lesser Black-backed Gull)L. fuscusも色や姿形は似ているが、全長51-61cmと大きさが全然違います。
昔、小樽でオオセグロカモメの夏の様子を初めて観察しましたが、まさにオーバン蒸留所周辺ではこのオオカモメがオーバン湾周辺の海と空を支配しているのでしょう。
こちらが2018年に小樽で撮影したオオセグロカモメ。オオカモメと比べると、羽の黒の濃度が全く違いますね。
それでは皆さん、良い夜を。

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